今日はいよいよパヤタスのゴミ処分場の訪問です。生徒に話を聞くと、マニラコースの中でも全員が意識をしていた場所でした。自分の想像と、現実がどの程度異なるのか、重要な意味を持つ一日になりそうです。
最初に訪れたのは、パヤタスにあるPICOという施設です。PICOはPayatas Integrated Cooperative Operationの略です。パヤタスの住民による協同組合を指します。写真は子どもの育児や医療に関わる講習と、診察の様子です。パヤタスの住環境は劣悪なので、病気になる人が多く、医療に対する知識や予防法もまだ徹底されていません。
続いて、ゴミ処分場のふもとにある家庭に、2グループに分かれて訪問をしました。1枚目の写真の奥に見えているのがゴミの山です。「あれ全部!?」「本当に?」という声が生徒からあがりました。想像以上の光景が広がっています。それぞれの家庭では、現在の生活状況や家庭環境をうかがいました。共通しているのは、ゴミのせいで病気や劣悪な住環境になっているものの、生活のためにはゴミが必要だということです。複雑な問題があります。
これはPICOの施設屋上から見える光景です。ゴミ山では以前に崩落事故があり、200名の死者を出したため政府が閉鎖をすることがありました。それではなぜ今?と思うかもしれませんが、閉鎖に抗議をしたのはパヤタスの住民でした。先ほどと同じく、ゴミがなくては生活が成り立たないからです。ゴミ山は拡大を続けており、写真の黄色の旗は、将来ここまでゴミ山が拡大してくるという目印です。目印より奥にある建物は立ち退きを迫られている状況です。
昼食後は、各グループが家庭訪問で話を聞いてきた内容を紙にまとめ、相手グループに発表しました。旦那さんがゴミ山で働いていたり、子どもの病気など、様々なつらい出来事や不安はありますが、どちらの家族も「家族で一緒にいる時が幸せ」と答えていたことが印象的でした。後のシェアリングでもICANのYukiさんよりお話があったのですが、パヤタスで生活をしている人たちは、狭い選択肢の中で、パヤタスでの生活がベストだと思ってここで暮らしているということです。また、パヤタスのお母さんの話では、貧しさとは、金銭的なものだけではなく、知識がなかったり、情報を取り入れることができないということを本当の貧困と呼ぶのだそうです。確かに、予防する知識があれば助かる病気や、知識が多くあるかと思います。
最後に、このようなさまざまな問題があるパヤタスにおけるPICOの活動を学びました。ここでは主に①保健教育②職業訓練③協同組合運営の強化、を行っています。先ほどの「知識・情報がない貧困」に対して、医療や育児に関わる知識や情報を提供したり、薬局を住民が経営していく手助けをしています。またCommunity Health Volunteerという医療の知識を持つ人材を育成し、パヤタスの住民たちだけで問題を解決していくことを目指しています。
午前中の育児指導から一転、午後はChild Careになっています。施設を最大限利用して、様々な取り組みを行っています。
パヤタスの最後に、フェアトレードの製品を作っている場所を訪問しました。昨年も光楓祭で販売をしましたが、実際に作り手のお母さんに出会うと、より身近に感じることができます。壁に書かれているのは「パヤタスで生計向上のために頑張る母親たち」という意味合いです。ゴミがなくてても生きられる生活のための取り組みです。
<今日の感想>
Taishi. 家庭訪問で一番の幸せの答えが「家族と一緒にいる時」というのは考えさせられる。想像よりもゴミ山は大きく、トマトパスタの腐ったような臭いがしていた。昨日の路上と比べて、子どもと一緒に生活している家庭は多いので、預かり保育がもっと増えると良いと思う。
Keisuke. ゴミ山で得る収入は、昨日の路上よりは良いかもしれない。裕福だが家族関係が良くない状況と、貧しいが家族が幸せである状況では、フィリピンの人々は後者を選ぶが、自分は前者かもしれない。町並みが薄茶色だった。
Sakutaro. 今までで、一番自分と遠いところに来たと思う。ゴミ山には緑もあり、本当の山のようだった。臭いには慣れることができたが、さすがに昼食時に臭いが漂ってくるのはきつかった。テレビで見ていた光景が少し身近になった気がした。
Yuki. 臭いはきつい。だが、住民は穏やかでにぎわいがあると思った。フェアトレードの人々が前向きに考えていた。自分にはできない生活だが、家族観がとても強く、その結びつきはうらやましいとも思った。
Misaki. ゴミに埋もれて一生を送る人や、18歳までしか生きられない人など、悲しい気分になった。周りの雑音もひどく、住環境は劣悪だった。ただ、この場所で取り組みをしているPICOはすばらしいと思った。
Julia. 子どもたちが皆小さく、栄養不足があるのではないかと思った。家庭訪問で話を聞いた時も、子どもを大学に行かせたいと考えていた。ゴミの臭いはとても強烈だったが、すれ違う人など、皆あいさつをしてくれた。
Rikako.1ペソをとってみても、自分たちとの価値観の違いが大きかった。家庭訪問のときに、ゴミ山から人形を拾ってきて、それを集めて楽しんでいると聞いたが、そんなことを楽しみにしているのかと驚いたし、日本の環境の良さも再認識した。食べ物も、ハエがたかったりと食べられなかった。
Stacy. ボロボロの家に、ボコボコの道路で、とても貧しい環境だった。臭いはとてもひどく、このひどい状況はかわいそうだと思ってしまった。
Saki. 路上と比べると、思ったより収入があった。ゴミ山で生活が救われている状況は、どういう立場で見れば良いのか戸惑った。ただ、現地の人々はみなキラキラしていたように思えた。
Kanako. バスで近づくにつれ、臭いやハエなどの変化を感じた。パヤタスに仕方なく住んでおり、生きているが、家族といれば幸せだと言っていた。子どもが幸せでなければ私は幸せではないという言葉は、母の言葉だなと思った。
<ICANスタッフManaさんのお話>
パヤタスに住むのはイヤ、触りたくない、などと思ったと思います。でも、あそこに生活している人の笑顔は輝いており、自分よりも尊敬できる存在がいるというのは大きなことだと思います。今日の昼食で提供してくれた魚、スープ、デザートは、普段当たり前に食べている物ではなく、少し豪華なものでした。私たちがつい当たり前と思ってしまうことが、実は裏では多くの努力や配慮によってなされていることもあります。観光で来ることを「貧困観光」と呼びますが、研修との違いは紙一重です。研修は、学ぶ意思があるということと、研修の結果、何かを得るということが必要です。残りの研修でも、貧困観光にならないように、学ぶ意思と結果を求めてほしいと思います。
<ICANスタッフYosukeさんのお話>
日本から先入観を持ってやって来ていますが、実は現実とは異なるということがあります。現地住民の心の動きを感じ取ることができないと、こちらは有益だと思って進めていることが、思った効果を生まないこともあります。また、見えないもの以外にも、見せてくれないものもあります。常に何かあるのではと考えておかないとより良いものは出てきません。頭の中でイメージするだけではなく、中に飛び込んでいって分かることが多くあると思います。自分の身近にあることに関心を持ち、そこにある感情を深く探ることが大切です。
明日は宿泊研修です。カビテという地区に移動をします。
インターネット環境が不確かですので、更新できない場合は気長に待っていてください。
去年よりもゴミ山が近い?相変わらず考えさせられます。
返信削除お、よく気がついたね。さすが。その印象は私も持ちました。
返信削除PICOの建物は立ち退きラインぎりぎりだそうですよ。
以前、テレビでスモーキーマウンテンに住む子供達を見てショックを受けましたが、
返信削除皆んなはもっと衝撃を受けた事でしょう。2度と出来ない経験です。しっかりと向き合って深く考えて欲しいです。
ごみはどんどん増えているのですね。
返信削除子どもたちの体験を通して
自分に何ができるのか考えてしまいます。